第23章 僕の名前を呼んで〜時透無一郎【R18】
「いいから早くおいでよ。明日早いから」
ゆきは、無一郎に強引に手を引かれ布団の中に招き入れられた。
「後ろから抱っこして寝るだけだから」
暫くしてすぐに無一郎の寝息が聞こえてきた。
ゆきは向きを変えて無一郎の顔を見た。まだ寝顔はあどけない少年だ。
私は、一体あなたの何を忘れているの?無一郎の唇にそっと指で触れた。
私はあなたと口づけをする仲だったの?
思い出せない…。唇の感触は義勇さんのが鮮明に残っている…。
弟みたいに可愛がってたのかな?まだ可愛らしいもの…
そう思いながら頭を撫でていた。好きという感情かはわからないが近くに居るのは嫌な気がしなかった。
ゆきは、いつの間にか無一郎の頬に手を添えたまま眠っていた。
少しして無一郎が、目を開いた。
自分の唇に手で触れた。
「手で触れてくるより唇で触れてこいよ」
そう言いながら、眠るゆきに唇を重ねた。起きてもいいと思い激しく唇を何度も重ねた。
ゆきは、口を塞がれて苦しいので体をよじった。
まだ夢心地なので目は開いてなかった。
いよいよ息が荒くなってきたので唇を離してやった。
ゆきは、まだ半分寝ぼけていた。そして口から出た名前は…
「義勇さん」
無一郎は頭に血が登った。なぜ自分を思い出さない。なんで冨岡さんで頭がいっぱいになっているんだ。今こんなに近くにいるのに、僕の腕の中で眠ってるのに。僕の事好きだって言ってくれたのに何で忘れてるの?
ゆきが、パッと目を開いた。
目の前に自分に覆いかぶさっている無一郎の顔があった。
「時…透さん?」
「今どんな夢見てたの?」
夢…あぁそうだまた淫らな夢を見てしまったんだ。義勇さんと口づけする夢だった。そんなの言えないよ
「見てないです。」
「そっか…」
無一郎は、ゆきの布団から出た。
「狭いからやっぱ一人で寝る」
そう言い残し自分の部屋に戻って行った。
ゆきは、なんだかホッとした。開放感からその後ぐっすりと眠れた。
無一郎は眠れず少しの間夜空を見あげていた。
夜に、よく義勇の屋敷にいるゆきに会いに行っていたそんな夜の事を思い出していた。
あの日のゆきに会いたいな…今のゆきは別人みたいだ…