第23章 僕の名前を呼んで〜時透無一郎【R18】
自分は何故いつも無一郎の姿を思い出してしまうのか不思議で仕方なかった
お館様も仰っていた。時透さんが思い出すきっかけになるかもしれないって。だからやはり私は時透さんの何かを忘れてるんだ…。
「時透さん、入りますね」
部屋に入ると、無一郎はすぐにゆきの手を引いて座らせた。
その、時に唇の端が切れているのに気付いた。
「どうしたの?さっきは離れてたから気づかなかった。」
顔を近づけて傷に触れてくる。
「あ、あのちょっと稽古中に…」
「可哀想に…」
無一郎は、ゆきの唇の端をぺろっと舐めた。
いきなりの事でゆきは驚いた。
真っ赤になって口元を手で隠した。
「と、時透さん!」
無一郎は、ゆきの両手を掴み顔を近づけて行った。
「呼び方が違うよ」
「え?」
優しく口づけをしてきた。それが全然嫌じゃなかった。
「そんな風に君は僕を呼んでなかった」
私…時透さんと親しかったの?なんて呼んでたんだろう…。
「これもよくしてたんだよ」
もう一度口づけしてきた。
「思い出さない?僕の唇の感触」
ゆきは、びっくりして顔を横に反らした。
えっ?えっ?えっ?
何それ
私時透さんとそういう事してたってわけ?
「ゆき何もしないって約束するから今日一緒に寝たい。いいよね?」
「い、一緒に?」
「うん」
「そ、それはやっぱり出来ないです…」
「なんで?」
「好きでもない異性の方と一緒にはやはり…寝れません…それに」
「何?それに?」
「まだ、義勇さんの事整理ついてなくて…」
無一郎は、腹が立った。僕の事が好きだったくせに。
「わかった…」
無一郎は下を向き黙ってしまった。ゆきはなんだかすごく悪い事を言ったような気がして無一郎を部屋に残して去ることが出来なかった。
まだ、少年だし…淋しいのかな?そんな事をぐるぐると考えてる間も下を向き座ったまま無一郎は動かなかった。
「一緒に寝るって一緒のお布団ですか?」
無一郎がゆっくり顔を上げた。
「いいの?」
「弟だと思って一緒にねます」
無一郎は弟は気に食わなかったがゆきの気が変わらないうちにゆきを布団に誘導した。
ゆきは、横を向いて寝転がった。無一郎は背中から抱きしめた。