第22章 大人の基準〜不死川実弥 時透無一郎【R18】
「話を聞いたのか?」
「師範…ごめんなさい。婚約者がいらっしゃるとは知らず私…昨日…あんな事してしまい…」
涙をためながら声を詰まらせゆきが謝ってきた。
お前は何も悪くない。昨夜求めたのはこの俺だ俺がお前を欲しい故に抱いたんだ。なのに婚約者がいることを伏せてお前の体を欲した俺に不満すら言わず自身が悪かったと言うとは…。
「悪いのは俺だ。この婚約はお館様に勝手に決められたものだ。俺は結婚する気がない。」
「でもさっきの方は師範のこと本気で…」
「俺はお前に本気だ」
「師範…」
「…稽古の続きを始めるぞ」
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夜の警備の任務中にお館様から鴉で伝言があった。
「産屋敷邸にすぐに来るように」との伝言だった。
2人は屋敷に着きお館様の待つ部屋に向かった。
中には、不死川と無一郎が居た。
「みんな集まったね。今日は記憶を失ったゆきが義勇の元に居るのは難しいと判断し、実弥か無一郎の屋敷で生活してもらおうと思っている。」
義勇が、口を挟んだ。
「お館様!ゆきは私の継子です。うちの屋敷で面倒を見るのが筋かと。」
「義勇…婚約者が理解を示してくれなかった。やはり一緒はだめだ。」
「ゆきお前に決めてもらいたい。実弥は少々気性が荒い。お前と居ることで少し変わるかもと思い選んだ。無一郎だが、お前の記憶を取り戻せる鍵になると思うよ。どちらかの屋敷で世話になるといい。選べないなら数日ずつ過ごしてみて住みやすい方に住めばいい。」
義勇は納得いかずにいる様子だった。
この日はそのまま帰ることになり明日から最初は不死川の屋敷に住むことになった。
ゆきは、荷物の整理を部屋でしていた。
「入るぞ」
義勇が寂しそうな顔をして中に入ってきた。
「ゆき…」
「師範…なぜお館様に言わなかったんですか?」
「何をだ?」
「結婚しないって、、、」
ゆきが、淋しい笑顔を向ける
「私の事が好きだって」
義勇の心臓が、締め付けられる。
「もし言ったらお館様もわかってくれたかもしれないです」
せっかくやり直せると思ったのにまた俺の言葉足らずでぶち壊した。
ゆきが放心状態の義勇を抱きしめた。
「婚約者様と幸せになってください。」
今夜は外は雨が降っていた…。