第19章 揺れる無一郎の心~時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥
「んっ」
ゆきが目を覚ましそうになったので無一郎は反射的に隠れてしまった。
「いけない…ねちゃった」
濡れた髪をかきあげて気だるそうに上を向く姿がとても色気があり無一郎は見とれてしまった。
ふと立ち上がったゆきが庭に目を向けている。裸足のまま庭に降りた。
「ゆき何がしたいんだろう?」
無一郎は、隠れて様子を見ていた。
今朝自分が折った紙飛行機をゆきが拾い上げ大事そうに胸に抱いていた。
無一郎は、思わずゆきの元へ行こうとしただが誰かに腕を引っ張られた。
目を潤ませた凛だった。
「私が居ます!師範…行かないで」
凛は無一郎の腕のなかに飛び込んだ。
物音を聞いたゆきが立っていた。
濡れた髪、浴衣も濡れ、泣き腫らして潤んだ瞳、胸に僕が折った紙飛行機を持ってこちらを見ていた。
無一郎くんは、凛と抱き合っていた。もう私じゃないんだって今わかった。
私が悪いんだ…今まで義勇さんを拒めなかった私が…。
私が…ダメなんだ…。
ゆきは、黙って部屋に戻って行った。
ーーー次の朝
朝早くから出ていくゆきの姿があった。無一郎は、その姿を見ていた。だが声をかける勇気が出なかった。
ゆきは、昨夜夜風に当たっていたため風邪を引いてしまっていた。すごい高熱だった。
義勇の屋敷まで行く途中で歩けなくなった。
木にもたれてぐったりしていた。
「おい!お前冨岡の継子じゃねーか」
少々荒っぽいこの声は…火照った顔で見上げた。
「し、不死川さん」
「おい?どうした?大丈夫か?」
「いえ、歩けないです」
「あー?」
不死川は頭をかいて困った様子だった。
「確か家は時透のとこだよな?」
ゆきを簡単に抱き抱えた。
「掴まっとけよ!」
「ま、待ってください」
不死川の首元にぎゅっと抱きついた。不死川は慌てた。
「お、おいどうした?」
「もう無一郎くんのお世話にはなれないんです」
そう言うと気を失った。
「お、おい!くそっどうすんだよ、とにかく体が焼けるように熱い仕方ねーなーもー」
不死川は鎹鴉に無一郎にこの事を知らせるように伝えて飛ばした。
ゆきは抱えられて不死川の屋敷へと連れて帰られた。