第19章 揺れる無一郎の心~時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥
「はぁはぁはぁはぁ…もう少しゆっくり走ってください」
ゆきの走る速さは柱には劣るので無一郎に付いていけなくなっていた。
無一郎は立ち止まった。
ゆきが、はぁはぁと息を切らしている。
「ボタン3つも外れてるけど何で?」
言われて慌てて胸元をみた。義勇が無理やり脱がそうとした時に取れたのだとすぐにわかった。
「あ、あの鬼に引っ掛かれて」
「ふーん」
「それと、隊服埃まみれだね。廃墟の寺床がかなり汚かったけど寝転んだの?」
「あ、鬼と戦う時に倒れたような気がします」
「ふーん」
無一郎は、ゆきの受け答えが変だと思った。
「冨岡さんも埃まみれだったけどあんな弱そうな鬼に苦戦したんだ。寝転びながら戦ったんだ」
無表情でじっと目を見てきた。
すると遠くから凛の声がしてきた。
「しはーん!お帰りなさい」
無一郎に抱きついてきた。
「重い…」
無表情の無一郎だがされるがままだった。
「しはーん帰りましょう」
無一郎は、ゆきに振り向きもせず凛と前を歩きだした。
ゆきは、薄々気付いていた。知らないうちに無一郎は凛に惹かれ始めてるんじゃないのかと…
ーーー
次の日の朝
ゆきは、義勇の元に稽古に行くため廊下を歩いていた。
庭から凛の笑い声が聞こえる。見ると無一郎と凛が紙飛行機を作っていた。
無一郎は、無表情で紙飛行機を織っていた。
二人を見ていると、年齢も同じだしお似合いに見えた。
胸がぎゅっと痛かった。
ふとこちらに気付いた無一郎と目があった。ゆきは慌てて玄関へ向かった。
扉の前に無一郎が立った。
「今から冨岡さんとこ行くの?」
「はい」
無一郎がいきなりゆきを壁に押し付けた。
「冨岡さんのとこ行く前に前に付けた跡が薄くならないようにまた付ける」
と言いながらボタンを1つ外され首筋が露になった。
とっさの事で止めれなかった。
首筋に、昨夜義勇が付けた跡が無一郎の目に飛び込んだ。
「はっ?そう言うことか」
「違うんです!これは無理やり」
「隙があるからだろ、心のどこがでまだ冨岡さんが好きなんじゃない?」
涙が溢れた…無一郎くんに嫌われた?無一郎は涙を拭ってあげなかった。
「冨岡さん待ってるから早く行けば」