第3章 空色の恋(時透無一郎)
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side 無一郎
「珍しいですね…」
初めて自分の屋敷に訪ねて来た人物に驚いた。
「冨岡さんが遊びに来てくれるなんて。」
「ちょうど今日は近くで任務があってな。
そのついでだ。柱合会議ぶりだな…」
数日ぶりの再会だった。
なぜ冨岡さんがここに…それも一人で。
「何か用事ですか?」
「あぁ、少し…話せるか?」
冨岡さんは近くの河原に僕を誘った。
屋敷には隠も出入りするからだろうけど、そんなに慎重に話す事などあるだろうかと少し構えた。
河原には人がまばらに座っており、風が気持ちよかった。
腰を下ろすと、冨岡さんは立膝をついたまま川を見つめ、話し始めた。
「単刀直入に言う。雫の件で来た。」
「雫の…?」
自分が少し苛立った気持ちになったのがわかった。
「雫の事で…冨岡さんが僕に話す事なんてあるんですか?」
そう言うと、冨岡さんの深く青い瞳が静かに僕を捉えた。
「時透、お前は…雫をどう思っている?」
「どうって…?」
冨岡さんに話すのは面白くない。
「話す必要ありますか?
継ぐ子に関わる話は師範に包み隠さず喋る義務があるんですか?僕はそう思わない…」
「俺は雫が好きだ。
自分の思いも伝えた。」
「…っ……」
胸に何かが突き刺さったようにズキンとした。
「そう…ですか。じゃあ二人は…」
「困らせたがな…雫は俺を選ばなかった。」
冨岡さんの言葉を聞いて、心底ホッとした。
「それで…冨岡さんは僕から何を聞きたいんですか?」
「言葉通りの意味だ。雫をどう思っているのか聞いて…納得できたら屋敷に行かせよう。」
確かに継ぐ子の行動は師範が握っている。
冨岡さんが言っていることは正しい。
「何も聞いてないんですか?雫から…」
「時透は自分をただの同衾相手だと思っていると…」
拳にグッと、力を入れた。
「正直初めは…そうだったかもしれない。
初めてしてから僕は快楽に溺れて…雫を誘ったから。
そう思われても仕方ないけれど…」
癪だと思いながらも、僕は冨岡さんに胸の内を話した。
冨岡さんの継ぐ子になったと聞いて愕然としたこと…
会いたいと思っている事…