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【鬼滅の刃】彩りの恋(R18)短編集

第1章 群青色の恋(冨岡義勇)



『………?』

コソコソと女将が耳打ちすると、雫が真っ赤になって焦った。

何を話したのか…

『お元気で。また必ず戻って参ります。』

馬車に乗り込むと、雫が女将の手を握り、最後の挨拶をした。




パカッ……パカッ……




「後悔していないか?」

『ぇ……?』

「あの屋敷にずっといたかったか…?」

『……淋しくはありますが…
義勇様と離れる事が、私には、一番辛いので…』

「そうか……」

『はい。』




「雫…少し前に言った事だが…」

『……?』


「俺の全部をお前にやる、と言っただろう。
何か…欲しいものはあるか?」

『欲しい物…ですか?』

ない、というのだろうと思っていたが…


『では…1つだけ……』

雫がそう言ったので驚いた。

「何だ。」


『義勇様が…いつかお貸しくださった群青色の手巾を…いただけませんか?』

「…そんな物でいいのか。」

雫は頬を赤らめて言った。


『あの手巾を見ながら毎日…色んな事に耐えてきました。
辛い時も淋しい時も、あの手巾があったから乗り越えられました。いつかまた、きっと義勇様に会えると信じていたから…
義勇様がお仕事でいらっしゃらない時もお守りにして、持っていたいのです。』


「…わかった。
では…町で匂い袋に仕立ててもらうのはどうか。」

『わぁっ…凄く素敵です。中身は藤の花の香がいいです。』


「あぁ…また屋敷に行こう。」

楽しみです、と笑う雫の頬に触れた。

『義勇様…?』




鬼殺隊でいる限りは命の危険とは常に隣り合わせ。

明日の命の保証もないが…

だからこそ、後悔のないよう伝え続けよう。






「雫…愛している。」



頬を染めながら、ふわりと微笑む雫の笑顔を


いつまでも守りたいと思った。


















ー群青色の恋ー


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