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【鬼滅の刃】彩りの恋(R18)短編集

第1章 群青色の恋(冨岡義勇)





「蜜団子を二つ頼む…」



鴉からの伝令で、山を3つ程越えた町にやってきた。
山3つと言っても、柱の足ならば数時間で着いてしまう距離。

それに、この町には数カ月前にも一度来たことがあり、何となく道を覚えていた。


鬼が出現するとされる夜まではまだまだ時間があり、夕方にもなっていないような時間では、近辺の偵察にも早すぎると判断して団子屋に入った。



それにしても…人が多い。

しかも、男性客が多い。

甘党の男が多いのだろうか…?


女性ではあるが、甘露寺の顔がぼんやりと思い浮かんだ。



『あの……』

一人の店員がおずおずと話しかけてきた。
注文をし終えたのに、なかなか立ち去らないとは思っていたが、のんびりと紙に書き留めているのだろう、と気にもならなかった。


顔を上げると、ハッとするような美しい娘が立っていた。
と同時に、何人もの突き刺すような視線。



なるほど…



「……何か用か。蜜団子は売り切れか?」

娘は焦りながら胸に手をやり、口を開いた。


『…軍人様、あの…3ヶ月程前、夜この町にいらした方ではないですか?』

「…3ヶ月程前?」


確かに以前この町で鬼を斬ったのは、それくらい前だったか…


「いたと思うが…それがどうかしたか?」

それを聞いて娘は目を見開き、ちょっとお待ち下さい、と店の奥に入って行った。


すぐに戻ってきた娘は

『これ……あの時軍人様にお借りした物です。
本当に…ありがとうございました。』

と言って、手巾を差し出した。


確かに俺の物だった。手巾は綺麗に畳まれていた。


「これは……あの時の。」


俺はこの娘が、あの夜、鬼から救った娘だと気付いた。


「…母親はどうだ?」

娘の傍らにいた母親は鬼に切りつけられ、既に大量に血を流して青ざめており、鬼化もしていない様子だった。
他にも鬼がいるかもしれないと周辺の捜索に向かいたかった俺は、近隣住民も集まり出したため、娘は大丈夫だろうとその場を立ち去っていた。


娘はフルフルと首をふり、涙を浮かべた。


「…そうか。」


という事はこの娘も遺族…


「辛いだろうが、母親の分まで生きろ。
それが母親への一番の孝行になる…」


『……はい。』


娘は力なくニコリと笑うと、少しお待ち下さいと奥に入って行った。
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