第1章 群青色の恋(冨岡義勇)
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今日は非番だった。
俺は1つ心に誓った事があり、早速女将に願い出た。
「女将…昨日の夜、鬼殺隊員が来て、かなり食材を使っただろう。町に買い出しに行ってこようと思うがどうだろう。」
「おはようございます、冨岡様。
そんな…買い出しだなんて滅相もございません。
私が行きます故、非番の日くらいゆっくりしてくださいませ。」
「…では、手伝い人である雫の付き添いという事なら文句はないだろう?ちょうど俺も町に用事があるからついでだ。」
俺が食い下がる様子を見て驚いている女将。
そうだな…俺がこんなにもしつこく自分の意思を伝えるのは初めてだ。
「そうですね…では、お言葉に甘えて…
あ…でも今日は午後から…」
「……?午後からどうかしたか?」
女将は少し考えてから言った。
「ふふっ…何でもございません。
では冨岡様、食材や調味料のメモを書いて雫ちゃんに持たせますので少々お待ち下さいね。」
「あぁ……」
朝餉をいただき、身支度を終えると縁側で外の空気を吸った。
昨夜、この家に来た隊員と雫を、極力合わせたくないと思った。
二人で出かけてしまえば雫は隊員の世話をしなくて済む。
「俺は…こんなにくだらない人間だったのか。」
勿論、雫の活躍の場を奪っている事に罪悪感はある。
それでも…
『…失礼します…義勇様…』
襖の外で雫の声がした。
支度ができたようだ。
「…入れ。」
『……はい。』
スッと襖が開けられた。
「っ………どうした?」
『町に行くからと…女将さんが…おしろいと頬紅、唇にも紅をさして下さって…変…ですか?』
「いや…」
変なものか。
美しすぎて阿呆のように見惚れてしまった。
髪もいつもは1つにくくっているが、下ろしている為、艷やかさがわかる。
それに着物も…
『女将さんが昔、着ていた着物のようで…』
「いかがですか?冨岡様。この着物は結婚当時、主人が買ってくれたもので、とても大切にしていたのですが、淡い桜色など、どうにも気恥ずかしくて…
着物もしまってあるより雫ちゃんに着てもらった方が喜ぶわ。」
恥ずかしそうに頬を染める雫。