第1章 現代
翌日ー…
私はいつも通り、病院で忙しく働き
定時内に終わらなかった仕事を残業をして終え、
病院を出る頃には、すでに夜の8時を過ぎていた。
帰りたい、とはとても思えない家に向かって歩いていると、私のスマホが着信を知らせていて…
それは珍しく、母からの電話だった。
『もしもしお母さん?どうした…』
「助けて…!お母さんっ…
あの人に殺されちゃう…!!」
『え…?』
「家で…!包丁振り回してるの…!!
お願いっ…、早くたすけてぇ…!!」
『ちょっ…、お母さん落ち着いて!?
もうすぐ家に着くところだから!』
「おねがいっ…!早く…!はやく、きてぇ…!!」
『お母さん…?もしもし?お母さん!?』
助けを求める母の叫び声が聞こえなくなったと思ったら、なぜか電話は切れていて…
すぐに掛け直しても繋がらなかった。
『どうしよう…』
警察に連絡した方がいい…
そう思うけど
以前にも似たような電話がかかってきた事があって、警察に電話したら、酔っ払った母が、私にふざけて電話をかけてきただけだった。
警察の人に叱られ、母にも叱られ…
飲み過ぎた母が悪いというのに
なんで私が叱られなきゃいけないの…と理不尽に思ったから、よく覚えている。
また今回も、あの時と同じだろう…
きっとそうだと思い込んだ私は
警察には通報しないまま、家に到着した。
それでも、あんな電話をもらった以上
多少心配な気持ちはあるわけで…
小走りでアパートの入り口を通過し
2階にある部屋向かって階段を駆け上ると…
『!!な、に……これ…』
…部屋の前の通路には
血液が垂れた痕が所々に残っていた。
『はぁっ…はぁ…、…お母さんっ……!!』
血を見た瞬間、嫌な汗が全身に流れ
呼吸が荒くなった私は
急いで自分の家である部屋に向かい
鍵が開いたままになっていた玄関の扉を開けた。
『お母さん…!!お母さんっ、大丈夫!?』
靴を脱いで部屋に入ると
玄関にも血の痕があちこちに残っていて…