第9章 死神と愛
柊の足腰が限界を迎えたのかプルプルと震えながら床へへたり込む寸前で杏寿郎が後ろから抱え込み持ち上げる。
汚れた背中をお湯でかけ流すとそのまま湯船に入る。
「っふぅーー。柊、すまない。手加減できなかった。」
「………。」
膝を抱えて前を向く柊の表情が見えない。
「怒ってるのか?」
「……ない。」
小さな声で聞こえない。なんだ?ともう一度聞き直すと
「怒ってない!」
「ははは、怒ってるじゃないか。だが怒った柊も可愛い。」
「っ!!…こんな風呂場でするなんて…。それに…杏寿郎、意地悪だった…。」
拗ねたような言い方が普段の柊とは全く違うくて杏寿郎は嬉しくなる。
「すまんすまん。柊の感じている姿を見るているとつい意地悪したくなってしまうのだ。…嫌いだったか?」
素直に杏寿郎が認めるとそれ以上責めるなんて馬鹿バカしくなってしまい
「嫌いではない。いつも優しい杏寿郎が…その、すごく特別に感じた…。むしろ…私の前だけだと思うと……嬉しい…。」
そう話していると杏寿郎の表情がニコニコと満面の笑みに変わっていく。その変化が照れ臭いような恥ずかしいようなで顔を真っ赤に染めていく柊。
「でもどうして急に?」町で酔っ払いに絡まれた後杏寿郎が急変してこうなった。特に理由なんてあったか?そう疑問にすると。
「あの男…。おそらく冨岡の事だろうが、いつも一緒にいるところを見ていたようだな。」
「まぁ見回りも兼ねて町を歩くし、夕飯はあの辺の定食屋を利用することが多いからな。」
「柊と冨岡が一緒に歩くところを想像した…。美男美女でお似合いだと…思ってしまったんだ。」
「…義勇だぞ?」
「わかってる。ただの嫉妬だ。情けない男だと笑ってくれて構わない。」
「…笑うわけない。杏寿郎、私が例え他の男と歩いていても、話していても、心は杏寿郎の側にある。」
「柊…。愛してる…。」
ぎゅっと後ろから抱きしめると2人は笑い合った。