第5章 縮む距離
ずっと身体に力を入れたままの私に気付いて、散歩でも行く?と声をかけられる。
その方が気が紛れるかもしれない、頷いてキャップを被せた。
「髪、伸びてきたね。」
この無駄に顔が整った男を美容室に連れていって大丈夫だろうか…。
切ってと手を握られ、どう考えてもダメだろうと首を振った。
失敗でもしたら神様に怒られる。儂の最高傑作に何してくれとんじゃあ!って…。
「切ってくれなきゃ抱いちゃうよ。」
「全力で切らせてもらいます。」
結局私が切ることになってしまい、散歩がてら鋏を買うことにした。
機嫌が良かったので散歩中にまた仕事の話をすると、言うなというように口を塞がれた。
「それ以上その話をしたら、口で塞ぐけど?ここで。」
人々が往来する街中…こんなとこでされてたまるか。
目的の物も買ってお昼ご飯も食べたので、急いで街中を出なければ…。
少し公園を歩いてから家に帰ってきて、すぐに髪を切る準備をする。
「ねぇ、奏音は僕とセックスしたくないの?」
「…あっ!ちょっと、いきなり変なこと言うのやめて……どうしよこれ…。」
動揺して白髪がばっさり切れてパラパラと新聞紙の上に落ちていく。
「したくないの?」
まだ言うか、これをどうしたらいいんだよ。
神様に怒られる…。
髪を切り終えて悟くんを浴室に押し込んでから後片付けをする。
ばっさり切れたのはなんとかなった…毛先の方だからなんとか整えることが出来た。
片付けが終わりそうになると浴室から呼ばれて、片付けを終わらせてから向かった。
「どうしたの?」
「奏音も髪の毛ついてるでしょ?早く脱いで。」
一緒に浴びるつもりだ…。
悟くんが終わってからでいいよと言うが、手を引かれて頭からお湯被る。
「びしょびしょなっちゃったね?脱がなきゃだ。」
なんという強行突破…悟くんの性格は昔から変わっていないようだ。
脱ぎにくいだろうからと無理やり脱がされて裸になってしまう。