第2章 頭脳という刀
「もしもしー!そこで一人で落ち込んでる、お屋敷のお嬢さん!」
「え…」
明るく、元気な声が私の頭上から降ってきた。顔を上げると、そこにいたのは、華やかな羽織をまとい、屈託のない笑顔を浮かべた女性だった。恋柱、甘露寺蜜璃さん。綺麗な桜と翠の髪がたなびいている。
「あのね、私、知令のこと知ってるの!君が鬼殺隊に入りたいって、しのぶちゃんから聞いたのよ。お屋敷のお嬢様が、こんなに頑張ってるなんて、すごく素敵なことじゃない!」
私は、蜜璃さんの真っ直ぐな言葉に、少し驚き、そして戸惑った。
「…でも、私には才能がなくて…。刀も上手く振れないし、みんなの足を引っ張るばかりで…」
私が自信なさげにそう言うと、彼女は私の手を取り、満面の笑みで言った。
「ううん!そんなことないわ!君の素敵なところ、私、知ってるんだもの!」
蜜璃さんは、私が鬼の行動パターンを記録した分析ノートを興味深そうに読んでくれた。
「これ、すごいわ!鬼の弱点や、次の動きが全部書いてあるじゃない!これ、私の呼吸と組み合わせたら、もっと強くなれそうね!」
その言葉に、私は初めて自分の持つ「頭脳」という才能が、鬼殺隊で活かせるかもしれないと実感した。
「私の呼吸はね、『恋の呼吸』っていうの。人を守りたいっていう強い気持ちから生まれたのよ。知令ちゃんも、誰かのために戦いたいって思ってるんでしょう?」
「…はい。」
「だったら、きっと私と相性がいいわ!私と一緒に、頑張りましょう!」
「え?!」
眩しくて天使のような存在の蜜璃さん。
そんな蜜璃さんの指導のもと、「恋の呼吸」の修行を始めることになった。