第2章 思い出す記憶
「戻ってくるぞ」
「OK!」
そうしてピットに戻るガーランドを迎え入れ、いつも通りに声をかける雅。
「アンリ、無茶しすぎ」
「うるさい」
「焦りは禁物だよ」
「解ってる」
こうなれば雅の言葉だけでなく誰の言葉も聞き入れる事はなくなる。小さくため息を吐いて雅はすっと身を引いた。
「…OK!」
「こっちもだ!」
そういわれてアンリは扉を閉め、すぐさまレースに戻っていく。
「…ハァ…」
「雅、少しだけいいか?」
「はい」
何かあったのだろうか…そう思わせる修の呼びかけに雅は横に立つ。
「…さっき、レース前に話していた『約束』ってなんだ」
「…え?」
「言っていただろうアンリが」
「…それは…」
「いえない、か」
「いえ…その…私情です」
「解っている。それを知った上だ」
「……あの、引かないでくれませんか?」
「なんだ」
「アンリがこのレースで1位になったら私が告白しろと…」
「は?」
「ですので…!今するような話でもないかと…」
「……なるほどな」
「はい」
「それは困るわぁ?」
クレアのふふっと笑いながらも間の抜けた声に修もまた頭を抱えた。それでも修はヘッドホンを通話に変えてアンリに指示を飛ばす。
「…アンリ」
『何ですか!』
「無理するな、それに約束の件は考えることなくレースに集中しろ」
『はぁ?約束って…なんでそれ』
「真坂に聞いた」
『…あのさぁ』
「私情持ち込むな」
『……はい』
しかし走りは荒れたままレースも終盤に向かっていく。そんな中でグーデリアンが追い上げてきた。ふと考え事をしたアンリはバンカーに乗り合げる。
「…アンリ!」
車体の振動で我に戻ったのも少し遅く、後ろから攻めてきたシュティールを除け切れずに接触をする。
「…ッ!!」