第7章 狂いだす居場所
「や、めてください!」
思い切りひっぱたきその場を離れようとする雅。それでも相手も必死だった。
「…黙ってると聞かされない限り…帰せねぇよ!」
「だったらなんでこんな…!」
「なんとでも言えばいい…あいつが…むかつくんだ…あの態度…言動…全部が!!」
「…だからって…!…ッ…ン…」
唇を塞がれる雅。離れようとしても相手に力でかなうはずもなかった。
「…このまま犯すこともできる…どうする?」
「するなら…すればいい…!!裏切りはゆる『その位にしとけよ』……ッッ…」
聞きなれた言葉、それに加えて一番会いたくて…聞きたかった…その人の声がした。
「おま…ッ…!なんで!レース不参加のはずだろ!」
「あいにく不参加なのはレースだけでな」
「……くそ…!」
こけそうになりながらもそのクルーは雅の上から退き、一目散にガレージを後にした。残された雅もゆっくりと起き上がり、衣服の乱れを整えた。
「…悪かったな、勝手に入ってきてよ」
「いえ…ありがとうございます…」
「礼言われることはしてねぇよ。」
久しぶりに聞いた加賀の声。それでも事態が事態なだけに顔を見れなかった。
「…でも…もう大丈夫なんですか?」
「あぁ、大したことなかったしな。」
「そう、ですか…ならよかったです。」
ぺこりと頭を下げ、背中を向けた時だった。
「雅ちゃん」
「…すみません…オーナーに報告しないといけないので…失礼します…」
そう言い残して加賀の呼び止めを振り切る様に雅はその場を去っていった。
「…ハァ…」
小さく吐かれた加賀のため息が夜のガレージに飲み込まれていくのだった。