第32章 新機、登場
「雅?風呂、空いたよ?」
「ありがと、先に入ってこよっかな…」
そう言うものの、なかなか立とうとしない雅の背後からトンっと凭れてきた加賀。
「…城?どうかした?」
「いや、そんなに根詰めなくても…」
「大丈夫だよ?このくらい…」
「大丈夫って言ってる間が怖ぇんだよ。先にゆっくりと入ってきたら?」
「ん、解った、そうする…」
そうして半ば強引的に加賀は雅を風呂に向かわせる。
「…ハァ…」
小さくため息を吐いた加賀。置きっぱなしにしていたパソコンを見れば細かくとられたラップタイムからコーナーのラインどりまで小さなことまで打ち込まれていた。
「ほんっと怖い奴」
あの短時間の走行でここまでの情報量を得ていたのかと思うと今までの自身に置かれて居た環境に対しての疑問も浮かんでくる。同時にこれをなくしたアンリの状況もふと頭によぎっていった。
「本当にすげぇ奴だな、雅は…」
別れ際にリックに言われた言葉が頭をよぎった。
『悪かったな、雅の事。すげぇ戦力だ。俺も気づかなかった。助かるよ』
加賀自身の中でもそういわせたのは数人だったはず。その残ったメンバーで今のチームも結成されていた。追加で入ったフィルを認めるのは早いとは思っていたが、雅もすんなり受け入れられたことが嬉しい反面これからの雅を守る事も欠かせなくなると思っていた。