第2章 思い出す記憶
「再度謝らせていただきたい」
「いやいや、こちらが不用意に突っ込んだのが悪い」
「ほら、アンリ」
「…」
「グーデリアン…いい加減にしないか」
「このサムライボーイがボケッとしてたからだろう?!」
「お前のが後ろだっただろうが!」
ハイネルの怒号も加えてアンリは面倒になったのだろう。『すみませんでした』と珍しく頭を下げた。
「…貴様は言うことないのか」
「ふん…悪かったよ」
「……貴様は…」
「もういいだろ!?」
ふいっと顔を背けたグーデリアン。よほどハイネルに絞られたのだろうというのが見て取れた。
「…たく…」
シュトルムツェンダーのガレージを後にして、修とアンリ、雅はスゴウのガレージに戻ってくる。
「…さて、アンリと雅に聞きたいんだけど」
「はい?」
「レース前に私情を持ち込むな」
「…はい」
「別に持ち込んでないですよ」
「アンリ!」
「だってそうでしょう?約束位何がいけないんですか!」
「それもそうねぇ、修さん」
「…クレア…」
後ろからゆっくりと入ってきたのは他の誰でもなくクレアだった。ゆっくりと修の横に腰を下ろしてするっと足を組めば、アンリと雅にまっすぐに見つめた。
「約束があるから頑張れる。それは素敵じゃない?」
「ほら…そうでしょう?」
「でもね?アンリ…」
「…はい」
「それで許されるのはいつでも冷静に走ることができるものにだけ許されてる事なのよ」
「……それって…」
「そう。それができないなら自分自身のトップの為だけに走ればいい。そうじゃなくて?」
にこりと微笑むその顔からは予想にもつかない位の言葉を突き出してきた。