第15章 誘われた夜
高台について、車を停めた加賀。シートベルトを外し、ゆっくりと降りる。そんな加賀について雅もまた降りていった。
「…寒くねぇか?」
「ん、大丈夫…」
そう答えたものの、雅は横にいる加賀の服の裾をつまんだ。
「どうした?」
「やっぱ…少しだけ寒いかも…」
「…クス…」
俯きながらもそう話す雅を、そっと腕の中に抱きいれた加賀。
「さっき、本当にうれしかった…いろんな知らない…その、加賀さんの事しれたから…」
「そうか、口はあの通りだけど…腕は確かだ。」
「…だろうね…、加賀さんが信頼してるから…」
「…フ…それ聞いたらグレイは笑うだろうな」
「なんで?」
「わがまましか言わねぇのにか?ってさ」
「…そんなにわがままなの?」
「あきれるだろ、ガキみたいで」
「・・・でもそんな加賀…さんもみたいな…」
「…やめとけ…」
「なんで?」
「見たら絶対に呆れる」
「…あきれない自信しかない…」
「へぇ…」
ちゅっと唇が額に降りてくる。
「…ッッ…」
「ほら、呆れてる」
「それとこれとは話が違う…」
「そうか?」
ポスっと加賀の胸に巻き付けば雅はゆっくりと話し出した。
「…あのね…」
「ん?」
「……ッッ私のが呆れられるかも…」
「なんで」
「…その…二人の時…だけでいいんだけど…」
「ん?」
「…その…」
「なんだよ」
「…城くんって…呼んでもいい?」
体全部が心臓になったかの様にドッドッ…と煩いほどの鼓動が包む中、そっと背中に回る加賀の腕が片方離れた。
「…ッッ」
「待って…その…」
「ごめん…ね?嫌だよね…」
「違う…」
ゆっくりと体を離す雅はちらりと視線を上げた。
「…え…」
「見んな…今は…」
「あの…」
「本っとそういうとこ…勘弁してくれ…」
暗くなった夜空の下でもはっきりわかるほどに加賀の顔は赤くなっていた。