第3章 鬼に稀血
その後は、風を切る音だけが聞こえていた。
土を蹴る音や木の枝が体に当たる感触。
仁美は目を瞑りながらも、自分が今鬼達から逃げられている事が分かった。
目を開けて、仁美は空を見上げた。
まるで列車に乗っている様に、目に映る光景がどんどん変わっていく。
だけど夜空で光る月だけが、同じ位置で2人を照らしている様に思った。
木々の間から動かない月を見ていると、急に実弥の動きが止まった。
「!!??」
グラッと実弥の体が揺れて、バランスが崩れて2人で地面に倒れ込んだ。
そんな時でも実弥は仁美の頭を自分の手で覆い。
地面に打ち付けられる衝撃はなるべく自分が受ける様に、体全体で仁美を守った。
実弥がそのまま地面に倒れたので、彼に抱かれたままの仁美もそのまま地面に倒れ込んだ。
地面に触れた瞬間に実弥の手が離れて、仁美は体を地面で擦り付けられた。
それほど実弥は早いスピードで走り続けたのだ。
「っ!!!」
仁美は羽織を羽織っていただけだった。
地面に打ち付けられた肌が擦り切れて血を流しても、仁美は体を起こしてすぐに実弥を見た。