第8章 4枚の婚姻状
義勇は仁美にとって特別だった。
血の誘惑も無く、彼に縋ったこともない。
だけど彼は腕を伸ばして仁美を抱き締める。
そんな義勇に仁美は自分の腕も彼の背中に回した。
仁美は天元の気持ちはこんな感じだと思った。
義勇が好きだと伝えてくれるこの腕が––––。
とてつもなく愛おしかった。
「仁美……。」
義勇は仁美の頬を両手で包むと、彼女の唇に口付けをした。
触れる手は大切に愛おしそうに–––。
唇はいくら触れても物足りなく、何度も何度も押し付ける。
仁美の匂いを大きく吸って、義勇は仁美を畳の上に組み敷いた。
「ん……っぁ……。」
舌が絡むたびに仁美から甘い声が漏れる。
絡み合う指はお互いを離そうとしないようにしっかり握り合う。
「ん……義勇様……。」
「仁美。」
義勇はゆっくりと仁美の前髪を掻き上げた。
赤い目が自分を捉えると、義勇は胸の痛みに目を俯かせた。