第6章 虹色の目の無神論者
仁美は話しかける童磨を無視し続けて、ひたすら無惨の後を追った。
「君。本当に死にたいの?」
「!!」
童磨は仁美の体を抱き上げた。
「あのさぁ、ここから一歩でも外に出てごらん。ここにはね無数の鬼が居るんだよ。知性のある鬼ばかりじゃないよ。君なんてあっという間に喰われて死ぬだけだからね。」
童磨の言葉を仁美は理解出来ていない様だった。
困惑した様に自分を見る仁美に童磨は気がついた。
仁美は鬼が人を喰っている事を知らない。
仁美は自分が被食者である事を分かっていないのだ。
同時に無惨が仁美を鬼からも守っていた事を理解した。
「…君は俺の元で体を癒す。そしてその小さな体が鬼を受け入れても壊れない様にする。それが君の旦那様が望んでいる事だろ?」
童磨にそう言われて、仁美は再び涙を流した。
「嫌……嫌なの…。旦那様じゃないと嫌なの…。」
同じ事を繰り返す仁美に、童磨は呆れた様にため息は吐いた。
面倒なこの慰めに苛々しないのは不思議だった。