第5章 傲岸不遜の鬼
無惨の細胞に抗体を付けた仁美の体は血を分けても鬼化しないだろう。
仁美の中にある無惨の細胞がこの後繁殖したとしても、それは鬼でもない人でもない生き物になるだけだ。
そんな仁美の体を取り込んだら、陽光に耐えれる体を手に入れられるかもしれない。
仁美が無理でも、仁美が子供を産み、その子供が鬼の細胞をさらに増殖させたのなら…。
そんな使い道の為にと生かしていた人間だった。
なのに今、仁美の体が傷付かない様に最善の注意を払い。
痛みで流れる涙を唇で拭いながら仁美を慰め。
込み上げる快楽の衝動には耐え難いほどの自制をしている。
少し力を入れたらすぐに引き裂かれそうな体を。
この世で1番大切なモノの様に扱っていた。
「……旦那様ぁ…。」
仁美には無惨のその行動が分かっていた。
少し動く度に辛そうな顔をしているのは、自分では無くて彼だった。
ゆっくり仁美の顔を伺いながら、変貌したその姿で、それ以上仁美を傷付けない様にと顔を顰めながら仁美の体を抱き締めていた。