第4章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽3〜
「お主、まだやるつもりかえ?」
「このまま撤退するのは性に合わない、私は2年前のまま私じゃない」
言葉と同時に周囲の空気が変わった。
足元に散らばる花弁が一斉に舞い上がり、美鈴の背に吹雪のように舞う。
(参る)
美鈴が鋭く睨んだ目付きをした瞬間、姿が霞んだ。
紅葉の仕込み刀が空を裂き、かろうじてその斬撃を弾くと、美鈴は紅葉の懐に滑り込んでいた。
花弁が束ねられ、鋭い斬撃となって紅葉を襲う。
「ほう、中々やるのう」
紅葉が余裕な笑みを浮かべ、その背後で中也が指を鳴らした。
「甘ぇんだよ」
地面が裂け、重力が美鈴を押し潰すかのように覆い被さる。
しかし、美鈴の輪郭がふわりと花弁にほどけ、次の瞬間には中也の真横に現れた。
「ご主人が攻撃を仕掛けると思いましたよ」
突き出された刀の刃先が中也の頬を掠める。
「やるじゃねぇか」
中也が低く笑う。
紅葉は仕込み刀を振り上げ、切り込む。
「邪魔ね」
美鈴は桜霞刀を二重に作り出し、紅葉の刃を受け止める。
火花が散り、花弁が舞い落ちる。
「流石、中也が言っていただけはある。マフィアに入っていいれば3年もしない内に幹部にはなれるじゃろう」
紅葉の声が苦しげに震え、美鈴は肩で息を整えながら中也に向き合った。
「私は幹部とかに興味が無いわ、ご主人の傍に居れれば充分よ」
「‥‥いい目じゃ」