第2章 情緒
いつもの柳瀬からは想像出来ない強い口調に、一瞬たじろぐけど。
大丈夫。
昨日みたいな、怖さはない。
「ねぇほんとにさぁ、けっこうギリギリなんだわ」
ふー、って。
息を吐き出して。
あたしをベッドへと下ろすと。
ネクタイを濡らして。
それをあたしに握らせた。
「俺言ったよな、あんたが欲しいって。手に入んないなら殺したいって。なのに何?なんで今!こんなとこで俺の目の前で!他のやつなんかに抱かれようとしてんの」
「…………ごめん」
「謝罪なんか欲しくねんだよ!!」
ガシャン、て。
スマホが後ろにあった大きな鏡を崩す。
「他のやつに触られてんじゃねえし、何唇なんか許そうとしてんのまじふざけんな。俺以外誰も見んな触んな触らせんな、話すな。」
ぐ、て。
顎が掴まれて。
膝立ちした柳瀬を見上げる形となって。
柳瀬が近付いた。
「もうほんと、監禁していい?」
顎を掴まれたまま、首筋へと柳瀬が触れて。
鈍い痛みを、感じる。
「…………」
「お願いだから、心配させないで莉央ちゃん」
はー、って。
おっきな息を吐き出して、柳瀬があたしを、抱きしめた。
「莉央ちゃんがいないって聞いた時の俺の気持ちわかる?生きた心地なくて。ほんと良かった。生きててほんと、良かった莉央ちゃん」
…………心臓。
柳瀬の心臓の音。
速い。
「…………何されたの」
「されてない」
「質問変えようか」
ぎゅうってする柳瀬の腕に力が入って。
あ。
これ首締まる。
息苦しいのに。
変。
ドキドキする。
これ。
「どこ触らせたの」
「…………っ、しッッ」
声。
でねーっつーのまじで!!
んの、バカ力!!