第1章 始まり(はじまり)
童「!まだ生きている!!
手当てを!!」
「いけません!血で汚れます!」
恵土「ふーっ!ふーっ!!
近…寄るな゛」
血を吐きながら、必死に睨む中
なおも、彼は笑って歩み寄った
童「大丈夫です…
もう…貴方を傷付ける人は居ません
鬼も居ません
僕達が守ります
安心して、休んで下さい」
そう笑って、両の腕を広げ、静かに歩み寄り、抱き締めてきた
何も武器も持たず、防具も持たず、周囲の武装を解かせ、叫んで制止し…行われたそれに……
太陽を背に、向けられたそれらに……
安堵と同時に…死骸と化した父を除く家族に、慟哭と嘆きが止まらず、咽び泣くことしか出来なかった
されるがままに抱き締められ
抱き返す力も無いまま
木刀が手から滑り落ち、地に伏したまま
わんわんと泣きじゃくるそれに
彼は言った
童「大丈夫
大丈夫です」
そう、目に涙を滲ませながら、背を優しく撫でてくれた
それが……産屋敷耀哉との、最初の出会いだった
彼を止めていた人は隠(かくし)という役職の人で、鬼関連の事件に置いての事後処理を担当する方なのだという
そのまま意識を手放す中、産屋敷家へ連れ帰られていた
眠っている間でのことで、既に三日は寝ていたらしい
治療を受け、満身創痍が癒えるまで療養を強いられた
それは産屋敷家に連れられる道中の中でも行われていたようだ
早い内に傷は塞がり、明らかな致命傷が辛うじてほんの一分(3.03ミリメートル)でも深ければ絶命していたとのことだった
それから…道中で、こんなやり取りを交わしていた
耀哉「貴方は…どうしたいですか?」
恵土「………
倒したい
一人でも多く
鬼を、罪を罪とも思わない大罪鬼を…!
同じ苦しみや哀しみを、これ以上拡げさせたりなんかさせない!!」
耀哉「……なら…鬼殺隊に入りますか?
これから半月後に、最終選別があります
生き残って、下弦の鬼を休み無く倒せば…柱にもなれるかと」
恵土「わかった!なる!!」
即決した
耀哉「では至急手筈を
剣は支給されるので、気にせず戦って下さい
武術の心得は
恵土「ある
……
前世の記憶だけれど
戦場(いくさば)で生き抜いた二十八歳までの記憶がある」
耀哉「ならば…それを今の貴方の身で、身に付けて下さい」
恵土「わかった!!」力強く頷く