第12章 ・克己(注…R18)
小さな胸が隠れる位の白いクロップドジャケットに、白いショートパンツを身に着けた、可憐な淫魔。
淡いルームライトの光に照らされた肌は白く、瞳は何故か、潤んでいた。
ゾロは眉間に皺を寄せ、少しドスの効いた声で言う。
「……お前を呼んだ覚えはねえ。誰の指示でここに来た?」
彼女は俯き、黙したままだ。
(リリスの部下は、もう来る筈ねえ……なら、敵か……)
ゾロはゆっくりと息を吐いた。
同じ魔神族でも、ルシファーを裏切った者は少数だが存在する。
その目は鋭く、彼女を一瞬だけ、睨み付けた。
(……おれを……殺しに来たか)
トウキョウは表向きこそ平和だが、その裏では『四文字の残党』が息を潜めている。
ゾロは街を楽しみつつも、決して警戒を解かない。
魔神族は不死……魂を砕かれない限り、死ぬ事はない。
だが今、目の前にいる淫魔が、もし刺客として自分を狙っているのだとしたら……それは、『死皇帝』の存在が敵に露見した事を意味する。
サマエルの助言に従い、魔力を完璧に断って行動していた筈だが、何処で感付かれたのだろう。
ゾロはしかし、泰然自若とした態度を崩す事なく、淫魔の出方を伺っていた。
(……おれを殺りに来たなら……斬るだけだ)
視線はテレビに向けられたまま。
だが、ソファーの後ろには愛刀が立て掛けられており、念動力を使えば何時でも抜ける状態だ。
しかし、リリムは答えもしなければ、動こうともしない。
俯いたまま、肩を震わせている。
彼女の感情が、ゾロに届く。
(何だ?こいつ……泣いてんのか……)
ゾロは面倒そうに、右手で何度か頭を搔いて、舌打ちをする。
「……話ならこの試合終わってから聞いてやる。そんなとこ突っ立ってねえで、座れよ。ああ、その前に窓、閉めてくれ」
リリムは小さく頷き、窓を閉めてから、彼女は目の前にある一人掛けの椅子に腰を下ろした。
丁度その時、ゾロが注目していた『背番号22』の選手がゴールを決めた。
再び大歓声が上がり、同じチームの選手に囲まれ喜びを爆発させている。
そして……ホイッスルの音が鳴り、試合終了。
ゾロ注目の選手が所属する国が、勝利した。
「……こいつ、マジでいい選手だな。ユニフォーム、買っちまおうかなあ」
ゾロは独り呟くと立ち上がり、冷蔵庫から新しいビールを取り出した。