第9章 雄英体育祭
みんなが保健室へ行くと、はボロボロの体で眠っていた。
けれど、その表情は――驚くほど、穏やかだった。
切「……ずっと……一生懸命、生きてきたんだな」
ぽつりと、切島が呟いた。
いつもの豪快な声じゃない。
心からの、真剣な声だった。
上「俺たちが“頑張る”とか言ってるの、全部きれいごとだった気がすんな……」
障「それでも……繋原は、ちゃんと俺たちと一緒に笑ってくれていた」
八「……こんなことを言うのは失礼かもしれませんけれど……あんな過去を背負って、よく、ヴィランにならなかったですわね……」
蛙「それだけ、強かったんだと思うわ」
麗「うん……強くて、優しかったんだよ……」
みんなが代わる代わる、を見守るように言葉を紡いだ。
――そのとき。
「……ん……」
薄く目を開けたのは、だった。
峰「お、おい!目覚ましたぞ!」
みんながの周りへ駆け寄った。
が起き上がろうとしたその瞬間、みんなの顔が視界に飛び込んできた。
その顔には、驚き、心配、安堵、いろんな色が混ざっていたけど……
そこに、軽蔑も、憐れみも、ひとつもなかった。
(……あぁ……なんだ……)
ほんの一瞬、USJのあと、病院で目覚めたときと景色が重なった。
あのときは……目を開けるのが怖かった。
でも今は。
(……もう、大丈夫なんだ。怖がらなくていいんだ。……だって、みんながいるんだ)
そう思えた瞬間――
切「……生きてる価値、もう十分あるよ」
ふっと目が合った切島が、迷いなく言った。
切「俺らは、お前がそうやって頑張る姿見て、励まされてる。……頑張ろうって、思えてる」
上「それって誰にでも出来ることじゃねぇと思うぜ。お前が今まで頑張ってきたからだ。ありがとな、生きててくれて」
その言葉に、の唇が、自然と緩んだ。
「……ありがとう」
それは――
これまで一度も見せたことのない、
にっこりとした“笑顔”だった。
一瞬、みんなが目を奪われる。
障「…」
上「お、おぉぉ……」
八「……!」
蛙「……ふふ」
耳「……いい顔じゃん」
切「……!!」
切島は何も言えず、顔を真っ赤にさせていた。