• テキストサイズ

【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第7章 「残るのは、君だけ」


抑えていたものが、音を立てて崩れ落ちる。
角度を変え、深く押し当てる。
互いの吐息が混ざり、湿った熱が唇の隙間から溢れ出した。


指先に伝わる頬の震え、鼻先をかすめる髪の香り。
耳の奥では、彼女の鼓動が自分の心臓と同じ速さで暴れているのが分かる。


――ただの生徒なんかじゃない。
この温もりを、誰にも奪わせたくない。


舌先が触れるたび、口元の傷が開き、鉄の味が混じる。
そのわずかな苦味すら、甘く感じられた。


唇が離れた瞬間、二人の間に細い糸が光を反射して揺れた。
息を切らしたが、まっすぐ僕を見上げてくる。


あの夜、悠蓮に怯えていた。
揺れる瞳が僕を映した瞬間、気づけば距離を詰めていた――
今ならわかる。

他の誰のことも、考えてほしくなかったから。


の瞳に映るすべてを、僕だけで満たしてしまえばいいと。


危なっかしくて、放っておけなくて――
でも僕の何気ない言葉に、ふっと笑ってくれる。
その笑顔を見つけるたび、胸の奥の温度が上がっていく。


誰より不器用に傷ついて、なのに誰よりも他人を優先する――
そういう脆さと強さの両方が、僕の中の何かを決定的に動かした。





――僕は、が好きだ。





好き、なんていう言葉じゃ足りない。
ただそこにいるだけで、息づかいも、瞳の揺れも、全部が僕をこの場所に縫いつける。


口角が自然と上がる。
驚いたように瞬きをするが、たまらなく愛おしい。



「……」



名を呼ぶ声は、自分でも驚くほど低く、穏やかだった。
額へとそっと顔を寄せ、確かめるように温もりを感じる。


視界の端から、余計な色も形もすべて消えていく。
残るのは、だけ――それでいい。





たとえこの先、何を敵に回すことになっても。
/ 440ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp