第7章 「残るのは、君だけ」
バンッ!!
扉が叩き割られるような轟音が、狭い部屋の空気を一変させた。何が起きたのかわからず、一瞬、呼吸が止まる。
男の手が止まり、反射的に振り返る。
「邪魔すん――……ご、五条悟!?」
驚きに目を見開く間もなく、五条の手が男の首をがっちりと掴む。
次の瞬間、容赦ない力で壁へと叩きつけられた。
ゴンッ――!
鈍い衝撃音が部屋に響き、壁がきしむ。
男の身体がずり落ち、床に崩れた。鈍い衝撃音とともに壁が震え、男の口から濁ったうめき声が漏れる。
五条は首を掴んだまま、壁に押しつける力をさらに強めた。
「……に、何してくれちゃってんの?」
低く抑えた声が、刃のように冷たい。
男は必死にもがくが、五条の指は鉄のようにびくともしない。
「がっ……! ま、待て……!」
「待たない」
目隠しの奥から放たれる圧に、空気がねじ曲がるような錯覚すら覚える。
五条は男の顔を壁に叩きつけ、再び押さえ込む。
「二度と触れられないように……全部、へし折ってやろうか?」
乾いた音と共に、男の腕が不自然な方向へと曲がる。
悲鳴が部屋を裂き、の耳を打った。
五条は冷え切った笑みを浮かべたまま、さらに首を締め上げ――
「お前みたいなの、生かしておく理由なんて、一ミリもないんだよ」
男の悲鳴が途切れ、喉からかすれた呼吸音だけが漏れる。
五条の手はさらに首元に食い込み、指先に力がこもった。
「先生っ!!」
五条の腕に、震える指先がそっと触れた。
「……もう、いいですから」
掠れるほど小さな声。
それでも、その声は五条の耳に確かに届いた。
目隠しの奥で視線が揺れ、五条はほんの一瞬だけ息を止める。
そして、力を込めていた指を解き、男の首から手を離した。
ずるり――。
男は糸の切れた人形のように床へ崩れ落ち、微動だにしない。
すでに意識はなく、浅い呼吸だけが残っていた。
五条は床に崩れた男へ一瞥もくれず、ゆっくりとに視線を移した。