第20章 「君の心をさらったその日から**」
「ねえ、」
「ん?」
私は湯呑みに口をつけたまま顔を上げた――そのとき。
「……初体験は済ませた?」
「ぶっ!?」
思わず口に含んでいたお茶を、盛大に吹き出した。
「なっ、なななっ……なに言ってんのっ、おばあちゃん!!?」
「やだ、汚いわね〜」
おばあちゃんは布巾でテーブルを拭きながら、けろりと言った。
「そんな取り乱すなんて……図星?」
「ち、違うからっ……!」
「違うの? なんか少し色気が出てきたって思ったんだけどな?」
「おばあちゃん、そーゆー話しないのっ……!!」
「なんで? 大事なことよ? 女の子だもん。恋愛だってするでしょ」
「そ、そりゃそうだけど、でも、でも……!」
「いやあ、青春ねぇ……」
おばあちゃんはしみじみと頷いている。
「……も、そういうお年頃なんだねぇ〜」
ほんとにもう。
(してたからって……おばあちゃんにそんなこと言うわけないでしょ……!)
頭の中でそう叫びながら、私は湯呑みをぎゅっと握りしめた。
(というか、する・しない以前の問題なんだけど……!)
(この人は、ほんとにデリカシーをどこに置いてきたの……)
“無邪気”にも、ほどがある。
というか、無邪気を免罪符にして平気で地雷踏み抜いてくるタイプだ。
でも、不思議と嫌いになれないのが、いちばんタチが悪い。
(こういうところ……誰かさんとそっくりなんだから……)
「……あ、そうだ」
そんな私の動揺もどこ吹く風で、おばあちゃんは急に思い出したように立ち上がった。
引き出しを開けて、ごそごそと何かを探している。
「あった、あった」
ひとつの小さな包みを取り出して、こちらに手渡してきた。
「はい、。これ、持っときなさい」
「え……? なに……?」
手の上にのった物を見た瞬間、顔が一気に熱くなる。
薄くて、正方形の小さな袋。
先生のベッドの引き出しに入っているアレだ。
「えっ……えええっ!?」
私が慌てて手を引っ込めると、ぽとっとそれはテーブルの上に落ちた。