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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第3章 「眠りの底で、目覚める」


昼休みの中庭。
陽だまりの中に置かれたベンチに、は虎杖たちと並んで腰を下ろしていた。


校内の桜の木々は、もう花びらをほとんど落としていて、風に舞う数枚の花弁が春の終わりを告げている。



「釘崎、そのスイーツ新作?うまそー。」



虎杖が羨ましそうに釘崎の手元を覗き込む。



「は? あげないわよ。食べたかったら、自分で買いに行きなさいよ」



釘崎はジト目で返しながらも、スイーツを少しだけ持ち上げて見せびらかす。



「一口ぐらい、いいじゃんか。あ、伏黒が食べてるパンもうまそうだな」

「人のもの欲しがるな」



伏黒は短くそう言って、無関心そうにパンにかぶりついた。


虎杖の食いしん坊なやり取りに、は思わず小さく笑った。
手にしていた未開封のおにぎりを差し出し、



「……虎杖くん、これ食べる?」



と声をかけると、虎杖が目を丸くした。



「え、いいの!? って女神?」

「……女神は言いすぎだよ」 



くすりと笑って返すと、釘崎が口を挟む。



「っていうか、全然食べてないじゃない。ダイエット?」

「いや、もうお腹いっぱいで……」

「腹痛いとか?」



虎杖が覗き込むように尋ねる。
伏黒もちらりと視線を寄越し、「……顔色、悪そうだな」と淡々と言った。


胸の奥が少しざわつく。
――夢のせいで眠れていないなんて、言えるわけない。



「……大丈夫。ちょっと寝不足なだけ。心配してくれてありがとう」



そう言って笑ってみせたが、笑顔がうまく作れている自信はなかった。



「ゲームのやりすぎ?」

「バカ、あんたと一緒にするな」



虎杖が軽口を叩き、釘崎がすかさず突っ込む。
そんな他愛もないやり取りが、今は妙に心地よかった。


ふと視界の端に、白い花が見えた。
校舎の壁際にひっそりと咲く、小さな花。


(……夢で見た花と、同じだ)


その瞬間、背筋を冷たい指でなぞられたような感覚が走る。
ひだまりの温もりが遠のいていく。
周りの声も、風の音も、どこか遠くに追いやられ――
花だけが、この世界から浮き上がるように鮮明だった。


――また、あの夢が呼んでいる。


指先が冷え、膝の裏がひやりと濡れる。
そこが現実か夢かもわからなくなりそうで、思わず視線を逸らした。
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