第2章 「はじまりの目と、最強の教師」
「……先生は、怖くないんですか? 私の力」
「うん。まったく」
迷いも躊躇もないその一言に、は思わず彼の顔を見た。
あまりに即答すぎて、ふっと小さく笑ってしまう。
その笑みは自分でも驚くくらい自然で――
張りついていた恐怖が、少しだけ遠のいているのに気づいた。
五条がひょいと手を伸ばし、の頭に軽く触れる。
「やっと笑った。笑ってる方がいいね……可愛いじゃん」
唐突なその言葉に、は一瞬固まり、耳まで赤くなった。
そして、照れ隠しのようにその手を軽く払いのける。
「か、からかわないでください……!」
少し間を置き、視線をそらしたままぽつりと続けた。
「……先生って、もしかして誰にでもそういうこと言うんですか?」
五条は声を立てて笑い、あっけらかんと答える。
「僕、ナイスガイでイケメンでグッドルッキングガイだからね〜」
「……それ、自分で言います?」
思わず返したの突っ込みに、五条は満足そうに笑みを深めた。
「ま、君の力については――僕がそばでちゃんと見ててあげる。だから一人で怖がらなくていいよ」
軽い口調なのに、不思議とその声には確かな温度があった。
(……先生がそばで)
その言葉が胸に残り、は視線を空に戻した。
朱と藍が溶け合う空が、さっきより少しだけ明るく見える。
恐怖はまだ消えていない。
でも――その隣に、確かに小さな希望が芽吹いていた。