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【天は赤い河のほとり】短編集

第2章 カイル:01│女神のいない大地で


【女神のいない大地で】ドリームside
カイル:恋人│1(1/2)/3P┃3500文字
ドリノベ様再投稿用変加筆済
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「側…室……?」

「あぁ」

静かにそう告げられた言葉が頭の中をぐるぐるとまわっていた。


(カイルが──側室を持つ)

前皇妃の息子である彼はいずれ皇帝の座に就くのが決まっている皇子。なのでカイルは、自分の皇妃にも数多くのことを求める。

自分と同じものを見ることができる視野。

公正正大なのはもちろん、時には皇帝たる自分を戒めることが敵う知能や知識、度胸や情。

共に長い道を歩んでいくための半身。


多くの重圧を課すのと引き換えに、彼は『その正妃ひとりを生涯愛し抜く─』と誓ったのだ。

(色々と難しいカイルが側室を…………)

わたしは『そんなカイルの正妃候補に』とカイル達とヒンティ前皇妃に育てられた。彼女筋の姪であり、カイルとはいとこに当たる。

決められた関係ではあったけれど、幼い恋心と共に育んだ愛情を自覚するのにそんなに時間は必要なかった。

(カイル…………………)



「そう…なにがあったの?」

「ナキア皇妃がジュダを帝位につけるために、皇子達の生命を断つ呪いを行うのに生け贄の少女を召喚したんだ。その娘を皇妃に奪われるわけにはいかない。わたしの側室であれば皇妃とて易々と手出しはできないだろう」

「生命!?え、そんなところの話なの…」

淡々と話された内容にめまいがする。

(生命、生け贄、召喚、少女……)

【娘────】


「それで…その彼女は?」

「今はわたしの宮にいるが………ずっと『帰りたい』と騒いでいる」

「……帰すの?」

「当たり前だろう。本人も希望していることだからな。もし奪われでもしたら大事になる。明らかに[危険になる娘]を野放しにできない」

「確かに……そうよね」


「それに…」

「わたしにはドリームがいるんだ」───と言いながら私を柔らかく抱きよせた。

(でもねカイル、わたしはなんだかイヤな予感がするのよ)
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