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おとなりさん【ランフレン夢】

第1章 導入


紙袋を抱えて、私はアイボリー家の玄関前に立った。



「よし……っと!」



軽く気合を入れるように声を出してから、インターホンを押す。
ピンポンという音のあと、ほどなくして扉が静かに開いた。



現れたのは、長身の男だった。
冷静そうな顔立ちに、どこか観察者のような目をしている。



「こんにちは。お隣に越してきた者です。
これ、ご挨拶の気持ちで……」



私は紙袋を差し出して、にこっと笑う。
中身は、手作りのクッキーと紅茶のティーバッグ。
定番だけど、こういうのは丁寧な方がいい。



男は少しの間私を見つめ、
それから扉を広く開いた。



「私がルーサー。この家の主だ。
……年の近い者がいる。ちょうど暇そうだし、顔を合わせておくといい」



「えっ、嬉しいな。よろしくお願いします」



ルーサーが静かに「ランダル」と呼ぶと、
階段の上から足音がして――



数秒後、少年が姿を現した。



学ランのような服に、少し癖のある髪。
ぱっと見は生意気そうな印象だったのに、
私を見た途端、ピタリと動きが鈍くなる。



「……あ……」



彼の口が小さく開き、
何か言いかけたものの、言葉にならなかったようだ。



「はじめまして。お隣の――」



私はわざと一拍おいて微笑む。



「って言います。よろしくね?」



自然に右手を差し出す。



ランダルはわずかに目を見開いたまま、
戸惑ったようにその手を見つめ――



そして、ゆっくりと手袋をした手を伸ばしてきた。



「……よ、よろし……あ、えっと……
へ、へへへ……」



誤魔化すような笑いと一緒に、そっと握られた手は――
手袋越しにもわかるほど、しっとりと湿っていた。



(緊張してるの、わかりやすいなぁ……)



私はその感触にくすっと笑いながら、
しっかりと握り返した。
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