【WIND BREAKER】夜が明けたら【R指定】
第2章 出会いってやつ
「…………手?」
おっそ。
そうだよ、その掴んでる手を早く離して欲しい。
私は思い切り男の手を払った。
簡単に払われた手を、男はまたぼーっと見ている様だった。
私に別に彼の挙動を待つ義理は無かった。
掴まれていた手首を少しだけさすって、私は彼に背を向けて歩き出した。
眼帯を付け直すと、そのまま私は歩き出した。
「……ねぇ。」
多分その言葉は私に向けられていると分かっていたけど、そのまま無視して歩き続けた。
その時はすでに男と距離があったはずだ。
なのに、次の瞬間に私の両肩を彼の手が掴んでいた。
後ろから彼の顔が耳元に近付いたのが分かった。
「名前…何て言うのぉ?」
今度は無視出来ない位に、確実に囚われた。
私は耳元に聞こえた男の声に顔を顰めた。
「……なな……。」
「ななちゃん?なんか偽名ぽいね。」
偽名なのだからしょうがない。