【WIND BREAKER】夜が明けたら【R指定】
第1章 馴れ初めってやつ
私は思い切り手を伸ばして、500円玉を取る事に集中する。
カラン…コロン…。
500円玉に集中していると、心地よい下駄の音が聞こえてきた。
最初は誰か通るのかと思って気にしていなかったが、下駄の音はだんだんと私に近付いてくる様だった。
それでも気にしないで自販機の下で腕を伸ばしていると、頭上から声を掛けられた。
「ねぇ……何してんのぉ?」
とてもゆっくりなインストネーションで話しかけられて、私はやっと顔を上げた。
声の主を足元から順に見上げて行く。
思った通り下駄を履いていて、着ている服は作務衣で羽織っているスカジャンは白とオレンジ。
更に顔を上げると、癖っ毛のある長髪に、大きめの丸いサングラス。
サングラスをずらして見る目が合った。
そう、この街で初めて話をした人物は十亀条くんだった。
梅宮一くん。
私は貴方より前に条くんと出会っていたんだ。
そしてそれが私の恋の始まりだったと…。
この時はまだ気付いてもいなかった……。
だけど梅宮くん。
貴方は私の小さな恋心に、私より早く気が付いていた。
それでも私の側に居たのは梅宮くん…。
貴方だった……。