第44章 会いたくて…
コンコン…
扉をノックする音がした…
「はい?」
八戒か…それとも三蔵か…悟空は端から選択肢になかった。ノックをしている時点でありえないから…
「…あの、お邪魔します…」
「…あ、えーっと…」
「美鈴です…」
そうだ、ココに来いと言ってくれた張本人…胸元から腰、いいラインだ。だけどそれでも誘う気にならねぇのはケガのせいじゃねぇって事は自分が一番よく分かっていた。
「…あの、薬を…」
「サンキュ、そこ、置いといてくれたら」
「…はい…ッッ」
「…ん?どうかした?」
「また後で来てもいいですか?」
「ん?ここ?」
「はい…」
「なんでよ…」
「あの…ッ…食事とか…」
「そういう事…助かる。」
そういえば心底ほっとした表情を見せてきた。
この女の顔を俺は幾度となく見てきた…だけど…部屋を後にする美鈴の背中に向かってぼそりと言うしか出来ずにいた。
「…わりぃな、美鈴…」
あの顔は…今までの俺だったら確実に乗ってたかもしれねぇ…でも…今は無理なんよ…
「…理世…」
あの声…もしかして…うちの三蔵に来たってなら…もしかしたら…
理世のいる村にも行ったのかも知れない…解らない…だけど…
「…会いてぇな…」
無事を確認したい…そんな手立てなんか一切ないのに…離れてるからこそ…こういう時にもどかしくなる…どうしたって知りたい…無事を確認したいのに…出来なくなって…
それでいて…
瞼を閉じればまだその笑顔を思い出せる…その時間はいつまでも続くわけじゃないって解ってはいるけどよ…
「あーぁあ…抱きしめてぇ…」
会いたいから抱きしめたいに変わるって…
どんだけ俺は飢えてきてんだって…笑えて来る…こんなケガ負ってんのに…