第32章 迷いと道
そしてその日の夕方、もうそろそろ夕食に向かおうかという頃だった。
コンコン…
「んぁ?」
そうして悟浄がゆっくりと扉を開ける。
「…やっぱり、起きてましたか…理世は?」
「わり…当分起きねぇかもしれねぇ…」
「全く、あなたという人は…」
「飯だろ…」
「えぇ、そのつもりですが…」
「起きたらなんか食いに出るわ」
「恐らく三蔵が許さないかと思いますが?」
「マジか…」
「少しここで待つので聞いてみたらどうですか?」
そう言われて悟浄は背を向け、中に入っていく。
「…おい、理世?」
「んー…」
「夕飯、どうする?」
「…ごじょは?」
「俺は…それなりでいいけどよ。体壊すと思うけど…」
「壊されてるからいい…」
「そういう問題じゃねぇのよ。」
そういう会話を聞いている八戒。
「悟浄行くなら私も行く…」
「おっけ。なら八戒に言ってくるわ」
「…言ってって…」
「今来てるからよ?」
そう言われて理世は布団の中にもぐりこんでいく。
「…行くってよ。悪かったな、待たせて」
「いえ、大丈夫です。では18時には食堂で…」
「おう」
そう返事を聞いて八戒は部屋を後にしていった。
「まさかあの人のあんな優しい声が聞ける日が来るとは…」
そう呟いた言葉は誰の耳に届くことも無かった。部屋に戻れば八戒は三蔵に伝える。
「…んじゃぁ、来るんだな?」
「えぇ。そう言ってました。なので向こうで合流ですね」
「あきれてものも言えねぇけどな」
そう呟いたままに身支度を始めるのだった。