第13章 scene12…旅立ち
下界の時間では半年が過ぎようとしているそんなある日の午前早い時、雅は突然菩薩に呼ばれた。
「おい」
「なに?菩薩…」
「そろそろ降りるか?」
「え?」
「下界に。」
「あ…そか……でも…」
「なんだ?ここに居たくなったか…?」
「二郎神…大丈夫かな…」
「なんだ?」
「菩薩の面倒また一人に戻っちゃう……」
「うるせえよ!!」
「フフ…」
「で?どうすんだ」
「…行くよ。」
「そうか、ま、そういうと思ったけどな…」
そう。呼ばれた理由は雅が下界に戻るという話だった。
「…ねえ菩薩?」
「なんだよ」
「夢の人たち……会えるかな…」
「…どうだろうな」
「でも……会えたら…どうするのかな…」
「言ってる意味がわかんねえけど?」
「…でも、忘れちゃってるよね…きっと…」
少し寂しそうに笑う雅。そんな雅の顔も菩薩は見慣れてしまった。
「んな泣きそうな顔してんなよ。こっちまでじめじめする」
「ひっどぉい!!そんな顔してません!」
「そうかよ」
「そうです!!」
「……でも、まぁ。縁があれば、また会えるさ。」
「…そっか…そうだよね…」
「あぁ」
そう答え、出発の日を明後日に決めた二人。荷造りやお世話になった西軍の人達へのお礼等も予て設定した日数だった。
しかし雅は今日中に終わらせようとしていた。
お礼参りを出来る限り終わらせ、最終日は菩薩と一緒に過ごそうとしていた。
「……二郎神…今なんて言った?」
「ですから、観世音菩薩は明日、一日公務でございます」
「……なんでぇ?」
「いえ、私にいわれましても……」
「……ですよね…」
明らかに雅は落胆していた。