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ツンデレ王子と腹黒王子

第9章 素直に


そんな中、次第に周りの人たちの声が聞こえてきた。

はっと我に返り、腕を振り払い立ち上がる。

俺は野木に背を向けたまま言葉を紡いだ。


「助けてくれて、ありがとう…。もう俺は大丈夫だから、杉山のとこに行けば?」


野木がゆっくり立ち上がる気配がした。


「貴夜…」

「隼人先輩!」


野木の言葉を遮る形で杉山が乱入。

俺は背を向けたままぎゅっと拳を握った。


「大丈夫ですか、怪我とかありませんか?」


杉山の心配そうな声が聞こえる。

後ろでいちゃつかないでほしい。


「俺は大丈夫。でも貴夜が心配……あ、おい!」


俺は信号が青になったのを見計らい駆け出した。

もう、あそこにはいたくない。

どうしようもないくらいに胸が締め付けられて、苦しくて。

涙が溢れてくる。

俺はそれを拭いながら走った。


「おい貴夜!」


突然腕を掴まれ、転びそうになる。

何とか体勢を立て直し、後ろを見た。

そこにはやはり野木が立っており、何だか怒っているようにも感じる。

と言うか、俺に追い付いて来たのか。

俺も足は遅い方ではないのに。

そんな事を考えていると、俺の腕を握る力が強くなった。


「痛い、離して…」

「お前、泣いてるの」

「!」


そう言われ、顔を背ける。


「こっち来て」


野木は俺の手を引き、細い薄暗い路地へと連れ込んだ。

そして壁に追い込み、逃げられないよう手をつく。


「何で泣いてるの」

「泣いてないし、追い掛けて来んなよ」


強気にそう言うが、なかなか目は合わせられない。

そんな俺の態度を見て、野木はため息をついた。


「今俺、お前に聞きたいことがあるんだ」


少し間を置いてから、目を細め俺を見る。


「晴に、何言われた」
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