第9章 素直に
「有名人?」
それはどう言う意味だろうか。
主婦の間でも知っていると言うことは悪ガキとかの類いなのか?
何て悪い方向に考えてしまう。
だが主婦たちの反応を見る限り、いい意味で有名人なのだろう。
俺が「どう言う意味ですか」と言ったら、主婦たちは笑顔で答えてくれた。
「うちの息子2人いるんだけど、上の方が朝妃ちゃんと同じクラスでね、いつも『朝妃ちゃんが~』って話してくれるのよ。聞けば、頭もいいしスポーツも出来るしそれに美少女。文句無しな女の子って私たちの間でも有名なの」
「あと下の子のいづみちゃん、姉妹そろって美少女って有名なんだよ」
知らなかった。
まずあいつらが気付いていないんだな、多分。
美少女、か…。
そんなことは思ったことないが、実際他人から見たらそうなっているのだろうか。
考え込んでいると、主婦たちはまた世間話に戻った様で、楽しくお喋りをしている。
チラリと時計を見てみると、授業が始まる2分前をさしていた。
そろそろ時間だけど、言えない。
時間に気付いている様子の人はおらず、会話に花を咲かせている。
どうすれば…。
困っていると、後ろから声が聞こえた。
「母さん、もう授業始まるけど」
そこを振り返り、硬直した。
何で、こいつがここにいるんだ。
「あら、来てたの、晴」