第8章 嫉妬心
あれから数日。
相も変わらず野木は俺をいいように使っていた。
休み時間になる度に仕事を手伝わされ、時々は襲われそうになる。
だが最近身に付けた軽い護身術で何とか最悪の事態はまのがれている状態だ。
最初の方は、昼もこんなことをされたらたまったもんじゃないと思っていたが、奴は昼になる度何処かに行ってしまう。
そういえば、恋人と会っているっていう噂は聞いたな。
俺は廊下の窓から、裏庭を眺めていた。
今は罰ゲーム中。
とは言うものの、罰ゲームを実際やっているのは春樹だ。
俺とのじゃんけんに負け、ジュースの買い出しに行っている。
その間が暇なため、俺は外を眺めていた。
「ははっ、やめろよ」
「!」
下から楽しそうな笑い声が聞こえ、視線を落とす。
目に映ったのは、座っている野木。
そしてその隣にいる、知らない男子生徒。
何してるんだろ。
何か、距離近くないか?
と言うかあいつ…。
「あんな顔して笑うんだ」
俺には見せたことのない笑顔を、他の奴には見せている。
もしかしたら、隣にいる奴が、噂の恋人なのかも知れない。
でも何で、どうして、そんな人がいるのに俺にあんなことしたんだろう。
どうして、好きとか言ったんだろう。
やっぱりからかっていただけなのだろうか。
そんな考えが頭に浮かぶ。
やばい、何かイライラしてきた。
落ち着け、俺。
別にあいつに恋人が居ようが、俺には関係のないことだ、気にすることじゃない。
でも、その2人の楽しそうな光景を見ると、心がもやもやする。
目を逸らしたくなって、でも気になって。
「何か、ムカつく…」
よく分からない感情が俺の中に渦巻く。
俺はそれを打ち消そうとするので精一杯だった。