第4章 初めて
「よぉ、探したぜ」
奴は俺を見るなりニヤリと笑った。
「野木…」
最悪だ、こんなところで見つかってしまうとは。
「貴夜くん、誰が…。あら、お友達?」
俺たちを交互に見ておばあさんが言った。
「ち、違いますよ、俺らは…」
「そうなんです友達なんですよ。俺も道に迷って困ってるんですよ」
馴れ馴れしく肩組むな。
振り払おうとするががっしりと固定されてしまっていて動きそうにない。
畜生、無駄に力強い!
「そうだったの、じゃあ貴方も泊まってく?」
「え、いいんですか?じゃあお言葉に甘えて泊まらせていただきます」
「え、ちょ、お前……っ!?」
腕に力を込められ首がしまる。
「いいよな、貴夜くん?」
そんな風に脅されたら、「はい」と言わざるおえないではないか。
またしてもこいつの思うように事が進んでいる。
くそ、俺が弱味何て握られてなきゃこんなことにはならなかったのに。
3人で食卓を囲む。
俺は度々野木を睨み付け、それに気づいた野木は楽しそうに笑う。
この猫かぶりめ。
ピロリン♪
そう思った時、俺の携帯にメールが届いた。
『分かった、気をつけて帰って来てね。 貴文』
さっきメールを送っておいた返事だ。
詳しい事情は話してないが、了承してくれたみたいで助かった。
携帯を仕舞い、再びご飯を口に運ぶ。
やっぱり美味しい。
母親が作ってくれていたご飯と味が似ているからか、何処か安心して食べることが出来た。
親の味と言うものを、知った気がした。