第4章 初めて
本当に何もない村だな。
結構歩いたはずなのに、ビルやマンションは一向に現れない。
時々後ろを振り向くが、野木が追いかけてくる気配はなかった。
民家とかないのかな、田んぼだらけ。
でも見晴らしはいいし、空気も美味しい。
とても、いいところだ。
もうしばらく歩いていると、田んぼで仕事をしている人がいた。
あの人、ここの人だよな。
何か分かるかもしれない。
俺はそう思い、その人に近づいた。
「あの、すいません」
仕事をしていた人がこちらを向く。
どうやらおばあさんのようで、俺はなるべく優しく声をかけた。
「ここら辺で、何処か隠れられる場所とかないですか?」
「隠れられる場所?」
直球すぎたか?
おばあさんは不思議そうな顔で俺を見ている。
「あんた、追われてるのかい?」
「えぇ、まぁ、そんなとこです」
「ここら辺に、隠れられる場所何てないよ、何もない村だからねぇ」
やっぱりか。
俺は肩を落とし、「ありがとうございました」とお辞儀して歩き出そうとした。
「あぁ待って」
おばあさんに呼び止められ、振り向く。
「もうお昼だし、うちに来なよ」