第4章 初めて
舌を俺の口内へと侵入させ、俺のと絡める。
「ふ、ぅ…ん」
何だよ、これ。
何でこいつ、俺にキスなんか…。
「んぅ…は、ぁ…!」
頭がぼーっとして働かない。
つきはなそうとするが力が上手く入らず、逆に抱き寄せられる。
「ふぁ、ん……ぷはっ!お前、何すんだよ!」
ようやく離し、突き飛ばそうともがくがびくともしない。
くそ、同じ男なのに!
悔しさと怒りが同時に込み上げてきて、よく分からなくなってきた。
「お前、キス初めて?」
かぁっと、顔が熱くなる。
図星だった。
「やっぱり。俺がお前の初めてか」
「意味深なこと言うなキモい!つか、いい加減離せよ!」
分からない、分からない。
こいつの考えてることが、よく分からない。
何の為にこいつは俺に構う、俺にキスする。
何でだ。
まず俺たち男どうしだぞ?
男が男にキスして、何が楽しい。
そりゃ、同性愛者だっているのは分かってる。
けど俺は、そっちの方の趣味はない!
野木を睨み付ける。
「そんな睨むなって。もっといじめたくなる」
「やめろこの変態!離せ、顔近づけんな!」
野木はようやく諦め、俺を解放した。
俺は立ち上がり、周りを見渡す。
流石、無人駅として有名な篠山駅。
こいつ、これも狙ってたな。
改めて野木を睨むと、奴は楽しそうに笑った。
「何、もう一回キスしてほしいか?」
「死ね!」
俺は野木の横を通りすぎ、走って駅を出た。
次の電車が来るまで何処かで身を隠そう。
もうあいつとは、いたくない。