第1章 始まり
「んじゃ、俺の案内はここまでだから。『夏目先生』って言う人探せば大体のこと分かるから」
などと言って春樹はさっさと教室へ行ってしまった。
それがつい数分前のこと。
俺は今、若い女の先生の後ろに付いて廊下を歩いていた。
どうやらこの人が夏目先生らしい。
「三好君がこの学校に入って来てくれて良かったわ。今中途半端な時期だけど転校生ってことにしてあるし、クラスの皆もいいこばっかりだから直ぐ馴染めると思うわ」
俺を振り返りながら言う先生。
本当に馴染めるかどうかは分からないが、少なからずその言葉に安心させられた。
春樹は同じクラスではないらしい。
まぁ別に構わないが少し不安はある。
が、この先生のクラスなら楽しくやって行けそうだと、何の根拠もないがそう思った。
「じゃあここで待っててね。呼んだら教室入ってきて」
もうとっくにチャイムは鳴り終わり、廊下には人気がない。
その広い廊下に先生の声が響く。
俺は頷き、先生が教室へ入って行ったのを確認すると、大きくため息をついた。
何だか、疲れた。
特に何もしていないのに身体が重たく感じる。
教室の中から先生の喋り声と、生徒のざわつく声が聞こえた。
「じゃあ三好君、入って来て~」
俺は重たい足を引きずりながら、教室内へと、1歩踏み出した。