第10章 本当は
翌日。
「やっとくっついたのな、お前ら」
春樹が呆れたように笑いながら言った。
「おう、だから俺たちの愛の絆を邪魔しないで…」
「お前もう黙れ!」
野木の頭を殴る。
「いって…まったく、昨日の素直さはどこに行ったんだ」
「毎日あんなのなわけねぇだろ。気色悪いわ!」
春樹はその光景を見て笑い、席を立った。
「俺ちょっと職員室行ってくる」
「おー、いってらっしゃい」
春樹は廊下を歩いていた。
「春樹」
呼び止められ後ろを振り向く。
「雄人さん、どうしたんですか?」
にこにこしながら近づいてくる雄人に少し引きながらも、春樹は笑顔を崩さない。
「本当によかったの?2人のこと」
恐らく、貴夜と野木のことだろう。
春樹自身、本当は辛いはずだ。
それを心配して、雄人は声をかけてきたのだ。
だが春樹は穏やかな笑みを浮かべた。
「俺は、貴夜が幸せならそれでいいんです。どんな結果になろうとも…。逆に、スッキリしてますよ。これで俺も、やっと前に進めます」
「そうか…」
雄人は、後悔していないことを聞いて、安心したように笑った。
あの2人はきっと、この先もうまくやっていくだろう。
春樹も、杉山も。
誰も後悔してないのなら、それでいい。
「いいものを見られた」
俺はこれまでを思い出し、これからを想像し、楽しくなった。
何処までも広がる空を見上げ、隣にいる彼女の手を握る。
「皆、お幸せに」
【END】