【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第12章 三社鼎立
あれから数日が経ち、港で豪華客船が沈没したと言うニュースが流れた。
恐らく組合がポートマフィアからの攻撃を受けたのだろう。
探偵社側には今の所戦争の被害は無い。
拠点としている晩香堂内に残る守勢側である福沢、乱歩、与謝野、賢治、香織は特にすることも無く、ただ監視映像を眺めたり、暇潰しの為に自分の趣味に興じたりしていた。
(暇だ)
「この講堂に侵入する為には、地下の廃路線を通る他ない。敵が侵入して来たとしても、路線内にある監視映像によって、事前にそれと知れる」
「道中は罠も満載だしね」
「与謝野さん、此れで花札でもしないかい」
「ほぉう、何を賭けるんだい?」
与謝野は目を光らせゲームを始めようとすると、乱歩の表情が変わる。
「乱歩さん、どうかしましたか?」
「社長、攻勢を戻した方がいい」
「敵か、襲撃規模は何人だ」
監視映像を覗くとそこには、不敵に微笑むポートマフィア幹部・中原中也が映っている。
「一人だ」
自動銃では歯が経つわけもなく、次々と破壊しながら進む中也を食い止めに与謝野、賢治が向かう。
中也は首領からの贈呈品だと言い、一枚の写真を取り出す。
組合の団員二人が写り、裏に現れる時間と場所が記されていた。
だが、唯渡しに来たのではない、何か裏がある筈だと思えば案の定だった。
ポートマフィアは組合を誘い出す為に、横浜から離れた宿に避難していた探偵社事務員を餌に誘き出したと言う。
確かに組合にとっては魅力的な餌だ。
「すぐ避難させりゃ間に合う。その上、組合はお宅等が動くことを知らない。楽勝だ」
「奴の言葉に嘘はあるか?」
「無いね、残念ながら。こう言う時は真実が一番効く」
「香織、事務員に避難指示を」
「はい、攻勢側にもこの事を伝えます」
「乱歩、国木田に繋げ。香織、太宰にも伝えたらお前は事務員を別の避難拠点まで送れ。外に車を用意した」
「はい」