【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第12章 三社鼎立
探偵社に着き、事前に与謝野に電話して状況を伝えたため、直ぐに治療が行われた。
「ぎゃぁぁぁーー!!!」
(ご愁傷さま)
悲鳴を聞きながら心の中で呟く。
治療が終わったのか、運ばれた三人とも自分の机の上へと伏していた。
肉体的には完治したが、逆に精神面が重傷になったみたいだ。
「全く不甲斐無いねェ、妾の能力がなきゃ今頃揃って土の下だよ」
福沢が現れ、伏していた国木田が勢い良く起き上がり外していた眼鏡を掛け直す。
「社長、申し訳ありません。俺が居ながら」
「佳い、少し出る」
福沢は一言置いて探偵社を後にした。
「ハァ、ありゃ相当鶏冠に来てるね」
◆ ◆ ◆
紅葉は目を覚ますと、微かに漂う薬品の香りと目前には見慣れぬ天井があった。
あの後何があったのだろうかと辺りを見回す。
自分の寝かされ、拘束されている寝台の横に目をやると、懐かしい顔がそこにあった。
「やぁ姐さん、ご無沙汰」
「確かに久しいのぅ……裏切り者よ」
四年前にポートマフィアから突如姿を消した太宰治と太宰の隣に立っていた敦を見つけるなり紅葉が問う。
「組織の誰もが其方の首を狙っておるぞ」
「ははっ、行列に並ぶよう言わないとね」
「……この程度の縛めでわっちを拘束出来ると思うたか」
「真逆、だから私が見張りに」
「……童、鏡花は無事かぇ」
紅葉は太宰の隣に居た敦に問いかけた。
「彼女は行方不明知れずだ……あなたの所為だ」
「くくく……」
「何が可笑しい!」
敦が異能で腕を虎化し、紅葉を殴ろうとするが太宰が無効化する。
「彼女は私に任せ給え」
「!?」
「善いから……」
太宰は敦を部屋から追い出し、敦は渋々出て行く。
「早速で悪いけれど開戦までもう間がない、そして捕虜には大事な仕事が在るよね?マフィアの戦況、今後の作戦を教えて貰おうかな」
「マフィアの掟を忘れたかぇ、坊主?江戸雀は最初に死ぬ」
「姐さんの部下に拷問専門の班があったよね……でもその班でも口を割らない鉄腸漢が現れる事もあった、そんな時は私が助太刀したよね、私が聞いても口を閉ざした儘の捕虜が1人でも居たっけ?」
太宰はドアの鍵を閉める。
「!?」
「此処からは大人の時間だね」