【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第28章 Final Stage Ⅰ 〜空港バトル!東雲姉妹VS条野〜
空港には、非現実的な静けさが満ちていた。
(はぁ、ご主人に会いたい。私もムルソーに行けば良かった)
ポートマフィア準幹部として中也任務に忠実な彼女は、中也がいる以外では感情を抑えている。
(ご主人が私を置いて別の男にいると考えてしまうと殺したくなるわね)
次の瞬間、足音が聞こえて来る。
奥から姿を現したのは、香織だった。
「あれ、美鈴ちゃん?」
予想外の展開に驚いている香織に対し、美鈴は冷静だった。
「この件に関しては、マフィアも探偵社も関係ないわ。目的は同じよ」
奇妙な共闘関係。
しかし、互いに背を預ける間柄ではない。
刹那の油断が命取りになる現場にそうして、彼女たちの前に現れたのはまたもや意外な人物だった。
「アァァァァァ……ッ!!」
血走った目、鋭く伸びた牙。
そこにいたのは猟犬の男、条野採菊。
既に人の理を失い、吸血種と化したその異形が、咆哮と共に二人へと飛びかかる。
「条野君!?」
尋常ではない様子の条野が心配な香織は駆け寄ろうとするが美鈴が香織の腕を掴んで引き留める。
「駄目、あれはあなたが知っている条野じゃない。『猟犬』までも吸血種になってしまったのね」
「そんな!」
「来るわよ!」
反射的に美鈴は異能を展開する。